なぜ「全部採用」では立ち行かなくなったのか
中小企業がシステムの話を進めようとすると、多くの場合「社内にエンジニアを入れるべきか」という問いに行き着きます。しかし、エンジニアの求人に応募が集まりにくい状況は続いており、条件を上げても採用できないという声も少なくありません。仮に採用できたとしても、特定の技術に詳しい人が一人だけという状態は、その人が辞めた瞬間に社内のシステムが誰も分からなくなるという別の問題を生みます。
そこで考えたいのが、「社内で持つもの」と「外部に任せるもの」を最初に線引きする方法です。これは技術の優劣の話ではなく、経営として何を手元に残すかの判断です。
線引きの基準は「業務の性質」で考える
線引きを考えるとき、使う技術や開発の難易度で判断すると迷いやすくなります。おすすめは次の3つの軸で整理する方法です。
- 自社の強みに直結するか:自社だけが知っているノウハウや、顧客との関係に関わる業務か
- 変化の頻度はどれくらいか:頻繁に手直しが必要か、いったん作れば長く使えるか
- 止まったときの影響はどれくらいか:止まると売上や顧客対応に直結するか
この3つを組み合わせると、大まかに次のような傾向が見えてきます。
- 社内で持ちたいもの:自社の判断基準そのものであり、頻繁に見直す業務ルール、顧客情報の運用方針など
- 外部に任せやすいもの:一度作れば大きく変わらない機能、専門性が高く社内で維持するのが負担になる技術部分など
- 両者の橋渡しが必要なもの:業務の要件を整理しつつ、技術面は外部に任せる領域
社内に残すべきもの:業務の「ルール」と「データ」
外部パートナーに開発を依頼しても、業務のルールを決めるのは発注側の役割です。たとえば「見積もりの割引は何%までなら担当者の裁量で認めるか」といった判断は、社内の人が決めるべき事柄です。
また、システムに入るデータの持ち主も社内です。顧客一覧、在庫、過去の取引履歴などは、会社の資産そのものです。どこに保管し、誰が見られるようにするかといった運用方針は、担当者が理解しておく必要があります。
この部分を外部に丸投げしてしまうと、後から「なぜこの仕様になっているのか分からない」「修正のたびに費用がかかる」という状態になりがちです。
外部に任せやすいもの:技術の実装と保守の一部
一方で、プログラムの実装、サーバーの設定、セキュリティ対策の細部、画面デザインの調整などは、専門の会社に任せるほうが効率的な場合が多くあります。これらは技術の進歩が速く、社内で常に追いかけ続けるのは現実的ではありません。
ただし、「任せる」と「放置する」は違います。保守費用が毎月どのような内容に充てられているのか、障害時に誰が対応するのかは、契約前に確認しておきたい点です。保守の仕組みについては、保守費用はなぜ毎月かかるのかといった考え方も参考になります(※この記事は一覧にない内部記事のため、詳細はご相談ください)。
判断に迷う業務の例
実際の現場では、白黒はっきりしない業務のほうが多いはずです。たとえば次のようなケースです。
- Excelで管理している売上・案件の一覧:データは社内の資産ですが、Excelの限界に来ている場合は、業務の流れを整理したうえで専用のシステム化を外部と一緒に検討するとよいでしょう。
- 現場の日報や作業ノウハウ:入力の形式や探しやすさは現場の声が大事です。ただし、実際に動くアプリに仕立てる部分は外部の知見が活きます。実際に、OneNoteで運用していた現場日報を専用アプリに置き換えた事例もあります(現場向け日報・ナレッジ共有PWAの開発)。
- AIを使った業務効率化:何に使うかを決めるのは社内、どのAIをどう組み込むかは外部、という分担が現実的です。AIは万能ではないため、回答の根拠をどう確認するかも含めて設計する必要があります。社内データを検索して根拠つきで答える仕組みの事例として、業務ナレッジ検索AIチャット「AIナレッジチャット」のようなものもあります。
線引きを決めるための3ステップ
いきなり完璧な線引きを作る必要はありません。次の順序で進めると、無理のない判断ができます。
- 業務を書き出す:今の仕事を、誰が・いつ・何のために行っているかを一覧にします。細かすぎなくて構いません。
- 3つの軸で印をつける:強みに直結するか、変化は多いか、止まると困るか。それぞれ「高い・低い」で印をつけます。
- 社内の担当を一人決める:外部に任せる部分についても、窓口と判断者を社内に一人置きます。これだけで、後の手戻りが大きく減ります。
最後に
エンジニアを採用できるかどうかは、会社の状況や時期によって大きく変わります。だからこそ、「社内で何を持つか」を先に決めておくことが、外部との付き合い方を安定させる土台になります。
どこまでを社内で持ち、どこからを外部に任せるか、迷う段階で一度整理してみたいという方は、LINEでお気軽にご相談ください。


